ゲーム天国ソーシャル地獄

「フリーソフト超激辛ゲームレビュー」でレビュー書いています。雑多的に書く予定です。

きが くるっとる 【スパルタの海】(1983)

【ニッポンよ、これがスパルタだ!】
今でも強い政治力を持っている戸塚ヨットスクールを題材とした1983年の映画です。

83年当時、戸塚ヨットスクール事件が起きて長らくお蔵入りしていたのですが、

最近ソフト化され劇場で限定公開をされたりしたこともあったそうです。

物語は、戸塚宏役の伊東四朗視点から描かれ、原作は東京新聞社が出したドキュメンタリー本を

ベースとしたものの創作がかなり付け加えられている形となっています。

この映画は、暴力描写がともかく激しく「ヌルいヨットシーンの間に暴力」というサンドイッチ形式に
なっているわけですね。それくらい最初から最後まで激しい。

話は、家庭内暴力を続ける少年俊平の家に、戸塚ヨットスクール講師陣が殴りこみをかけるシーンから
始まります。実際には殴りこみではないんですが、どうみても屈強なヤの極道の方々が殴りこみを
かけているようにしか見えません。
俊平は、「食卓に嫌いなにんじんが出た」というだけで妹に暴力をふるい、ヌンチャクで祖母祖父を殴る
いかにも凶暴な少年です。そんな彼が「ヨットだけには行きたくねェーッ!」と精一杯の抵抗をするわけです。
テーブルクロスに火をつけたり、自分の部屋の窓ガラスを割ったりするわけですね。
しかし、やはり大人大勢と少年一人だと圧倒的にヨット有利。暴れまくる俊平を容赦なくぶん殴って車に
拉致し愛知県に連れていくわけです。

そして、割れた窓ガラスからクローズアップ!「スパルタの海」!もうこれはヤバい!

俊平は、ともかく暴れまくるのですがヨットスクール合宿所で強制的に丸刈りにされ丸め込まれ
「おいおい、こいつ・・・」となるわけですが最後は戸塚校長の良き理解者となってしまうわけです。

それでいいのか。
いいのか・・・。

2度心臓をやられたんだぜ。
1度やられたあとに校長が「酸素ボンベが近くにあるから、しごきも大丈夫だろうハッハッハ」
みたいなことをぬかしているんだが、ダメだろう。それは。

そして、やはり劇映画として出たので恋愛要素とかも盛り込まれているわけですね。
俊平の恋の相手となるのは、スケバンの明子。家は酒屋です。
この子も、家庭内暴力で家の仏壇をぶっ壊したり、酒瓶をともかく割りまくったりとともかくハードな暴力を
してきていたのでヨットスクール送りとなったわけですね。
まさしくスケ!これぞスケ!という感じの人でした。
しかし、まあ色々とあって目がまっすぐな感じになり、黒髪前田敦子チックに更生した、と。

そういうのを更生と言うんだろうか・・・。

伊東四朗と暴力について】
そして伊東四朗。この人は、この時はまだコメディアンとしてソロ活動をしていたのですが
もし、この映画が公開されていたらきっと今は佐山聡的なポジションになっていたんじゃ
ないかな・・・と思います。

佐山聡は、昔は偉大な格闘家だったんですが今は「体罰の会会員」とかやっていて、「催眠術が史上最強!」
だとろくでもない感じになっています)

ともかく殴る殴る。容赦なく殴る。そして、他の方が塾生を殴っているのを見てニヤニヤ笑っている。
伊東四朗氏は、戸塚ヨットスクールを支援する会の理事をやっているわけですが、そういう経緯が
あるので『もう、これ演技じゃなくてマジでやっているよね』『本人の隠された本性がもう出まくりですよ』
というそういう感じですね。

ひたすら殴る!ひたすら人格を否定する!ひたすら顔面を蹴る!
走るのが遅かったら殴る!腕立て伏せが遅いと海に叩きこむ!ヨットを漕いでいる時にしくじると、海水を浴びせる!
とある少年は、あまりにも暴力が嫌だったのか「集団通学している小学生の女の子に向かって包丁をつきたてた」
ということをしてしまいまして。
結果的に、彼は少年院送りとなったのですがおそらく「そういうことをしないと、ここを出れない」
「少年院のほうがまだマシ」だと本人は思っていたんでしょう。その顛末まで描かれていないので想像ですが。

この映画は、そういうスパルタイズムを美化しているわけなんですが「実体」というものをもう嫌になるくらいに
捉えている、と言っても過言ではないです。

すでに、映画内では数人暴力によって塾生が死んでいる現状なのですが、ある日事件が起きるわけです。
総合失調症の少年が入ってくるわけなのですが、明らかに「もうヨット乗るとかそういうレベルじゃない」
わけですね。ヨットスクールの他の講師が無理やりその少年をヨットに乗せるわけですが、どこからどう見ても
「死体をヨットに入れて流す」ようにしか見えない。

そんな状態で、しごきまくって殴りまくっていた中、ついにその少年は死んでしまうわけです。
1週間ですよ。入って一週間でそれって・・・。
で、そのあときったねぇブン屋やマスコミ、そして一般市民から来る集中砲火!なり止まらない黒電話!

しかし、ここで戸塚の子供2人を出して「本当は良いおとうさんなんだよ♪」アピールをしたり
前述の俊平が心臓をやられた時にも戸塚校長は自ら命を救ったり・・・。

結果的には「ちょっと死んでいるけれども、死なないのもいたからオールオッケー」みたいな
そういう感じでした。良くねえ!

現実世界と、伊東四朗の狂気性、暴力性というものがもう気持ち悪いくらいに噛み合っていて
まさに「これぞ彼の本当の姿だ!」というそういうのがですね、もう出ていたわけです。
もう演技じゃないよ、これは。

(塾生も、死んだ目をしているんですがこれが演技だと思えないくらいに死んでいるわけです。
多分、リテイクとか食らいたくなかったんだろうな・・・)

【映画としてどうなのか】
映画としては、すごく面白いんですよね。
伊東四朗の怪演もさながら、映画としてもきちんとまとまっている。
「暴力満載の青春映画」という視点で見ても結構面白い。

ただ、それでもやっぱり「戸塚ヨットスクールはクズい」と思います。
よりいっそうそう思うようになりました。

何故か、この映画では「初登場する人物の紹介欄で、学歴が表示」されているわけです。
その意味がずっと分からなかったんですが・・・。
これは憶測ですが、多分「どんなに親が高学歴でも、中卒でもクズはクズになる」
「そういう人でなしを、戸塚ヨットスクールは平等に殴って更生させる」
というのが裏のテーマだったんじゃ
ないのか、と思います。

・・・そういう映画ですね。
あと、この映画のエンディングテーマは「ガンジー」という謎のフォークグループが歌ってるんですよね。
ガンジーは非暴力主義者じゃねえかよ!